そしてその日を境に、受け身を取ったりくしゃみをすると頭に響く事に気付く。ただ、普通の生活をしてる時は特に痛みも感じない状況だった。

会社の先輩達に相談すると心配されると思い、同業者の友達が多いあたしは、信頼の出来る一人の人に相談する。

『きっと、練習中に受け身の失敗で頭打っちゃったからなんだと思うけど、ここのところ頭痛がするんだぁ』

と、その人は
「頭部の事だからいい加減な事は言えないけど…自分もそういうのあるよ。でも数日経つと治っちゃってたりするんで、大丈夫」

『そっかー、良かった』
それを聞いて安心したあたしは、また10月31日の試合に向け毎日の道場通い。日に日に痛くなって行く頭部にめげず、練習に打ちこんだ。

試合を数日後に控えたある日、自分がドロップキックをして受け身を取った時にさえ激しい痛みを感じうずくまるあたし。心配してかけよる先輩達に

『すいません、受け身失敗しておなか打っちゃったみたい』
ってごまかした。

だって、今、頭が痛いなんてばれたら、病院行きなさいって絶対言われるし、もし検査で何かあったら、試合に出してもらえなくなるでしょ!

あと数日の我慢だわって思いながらも、徐々に
『試合が終わったら病院でちゃんと検査しよう』
とも思うようにもなってた。
自分の事は自分が一番よくわかる。日々悪化していく痛みに、明らかに尋常では無い事を悟っていた。

『試合中に頭が痛くなりませんように、無事に試合が終わりますように』
毎日心の中で呪文のように繰り返してた。

迎えた試合当日の10月31日、試合開始直前で不安なあたし。普段電波の悪いはずの後楽園ホールの控え室で、あたしの携帯が鳴る!

それは唯一、あたしが頭が痛いのを知っている、あの信頼の出来る一人の人からの題名も本文も無いメール

ただ、そこにはあたしが元気になるような写メが添えられていた。